アラスカの大自然の中で武道する毎日を雑記


by alaskakendo

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b0241736_1234618.jpg全日本剣道八段優勝大会観戦は八段収得後、5年以上の経験を積み且つ65歳以下の、若いが技量が円熟し、心技体全てにおいて充実した達人たちが集結する日本剣道最高レベルの大会である。





参加者32名は誰が優勝しても不思議のない名人、達人が出場するが、そのなかでも今回の目玉は今回初出場する剣道界のスーパースター・宮崎正裕選手、その宮崎選手に全日本選手権大会で勝った経験もあり、今回2連覇を狙う稲富選手、そして日本剣道界の最高タイトルを得て王者復活を狙う石田利也選手がどこまで活躍するか、はたまた他の老練な業師たちがそれを凌ぎ、頭角を表してくるかであった。

その結果60歳の実力者・古川和男選手が石田選手に二本勝ちで初優勝した。彼はこの大会に10回も出場しているツワモノで12年前3位、6年前2位と6年ごとに順位を上げてきて、最高峰の地位を得たわけだが、今回の試合内容は大変興味深いものだった。

以下は私が観戦したこのハイレベルな戦いに関する個人的且つ主観的な感想である。

組み合わせ表左側第1ブロックの最後は石田選手、宮崎選手は第2ブロック最初に名前があり順当に勝ち進めば準決勝で出会うことになる。

一方右側の稲富選手は第3ブロックなので、決勝まで行かなければこのどちらかと戦うことはない。稲富のブロックでは古川選手、そしてその下のブロックには島根の若い八段山中選手、そして今回最年長の達人・豊村選手がいる。

好勝負は一回戦から続いたが、注目すべき試合だったのは、まずこの大会の優勝経験を持つ船津、石田両選手のそれぞれの高いレベルを示すような怒涛の攻めと打突だ。

船津選手はVS清田選手、続く石田選手はVS高木選手だったが、どちらも素晴らしい攻めと打突で二本勝ちを収めている。

この二人が早くも2回戦で対戦し、先輩の船津選手に石田選手が二本勝ちを収めた。一本目は石田選手の攻めを嫌い両手を伸ばして竹刀の切っ先で牽制したところを石田選手がコテに取り、二本目は石田選手の攻めに対して退いた所をもう一歩踏み込んで面に行くという彼の得意な正攻法の戦法が決まった。石田選手は遠い間合いから面に出ることができるので、これを警戒した船津に対して早くから勝負をかけた石田選手の気持ちが勝っていたからだといえよう。船津選手は得意のコテ・面や胴などを出す機会もほとんど見出せず、好調時に見せるダースベーダーを連想させる息遣いが出る前に勝負が決まってしまった。




b0241736_12355563.jpg宮崎選手も準決勝まで危なげなく勝ち進んだ。

1、2回戦同様、3回戦目の相手、香田選手相手にも相手の竹刀を抑えて打ち間に入ってから面に乗る彼の得意なパターンを数度繰り返す。しかし香田選手も業師なので、当たっても浅いか軽いかで、なかなか有効打にさせない。

1、2回戦とはさすがに相手が違うため、宮崎選手は多少警戒を見せたが、いかんせん香田選手は声が出ていなかった。それが逆に不気味さを漂わせていたが、香田選手も徐々に宮崎選手を攻めるようになると、宮崎選手はここで相手の攻撃を大体見切ったのか再び攻め始め、結果二本勝ちを収める。

白の宮崎選手に対し赤・石田選手の準決勝は、初盤宮崎選手がまさに打ち間に入らんとする所に遠間からの石田選手の面が炸裂した。この絶妙なタイミングを捉えた面でまず石田選手が先行する。しかし宮崎選手もただでは終わらない。一本をとって多少守勢に回る石田選手を彼得意の攻めのパターンで攻め込み、後退する石田に向けて面を打つと旗が3本一斉に上がる。

が、しかし色が違う。上がったのは「赤(石田選手)」の旗だ・・・。打突直後の宮崎は「やった〜」という雰囲気を漂わせており、石田選手は「やられた〜」という感じにも見えたのだが、石田選手は審判の旗にすぐに気づいて「よし」という感じを見せ、対する宮崎選手は審判一人一人の旗の色を確認するや唖然とした様子で開始戦に戻った。なんとも後味の悪い結果となったが、結果は石田選手の二本勝ち。宮崎選手は試合場を去るときに軽く天を仰ぎ、「Unbelievable」という様子満点だった。私もこの判定にはかなりショックを受けた。私の見ている位置からは宮崎選手の打突が石田選手の面を捉えているのと、石田選手の竹刀が宮崎選手の面の左をかすめているのが見えた。石田選手は宮崎選手の攻めに後退し、続く打突に合わせて面に行ったと思われるが、私の場所から彼の竹刀が宮崎選手に当たるところは見ることができなかった。




石田選手は足や腕を気にしている仕草がみられ、体のキレも徐々に悪くなってきていたので、もしここで宮崎選手が一本を返して同点となっていたら、宮崎選手が試合を制していた可能性は高いと思っている。

大変残念なことだったが、この負けで宮崎選手の勝負魂に火がつき、より上のレベルに向かうきっかけとなって欲しいとこころから願う次第である。




さて、組み合わせ表右側の第1ブロックでは、大変興味深いことが起きていた。
こちら側は誰が出てくるかが大変興味のあるところだった。

まず後半第一戦、古川選手が片山選手の大きな打ちに苦戦しながらなんとか勝ち進む。

続く笠村選手も、伝家の宝刀のコテで勝利を収めたが、延長戦でやっととった感じだった。

このブロックでは昨年優勝の稲富選手が1回戦を危なげなくものにしたにも関わらず2回戦で最近絶好調の松本選手に敗退し、彼の好調さに期待が膨らんだ。

下のブロックでは山中選手が勝ち進んだが、この日の山中選手は剣先での攻防よりも前後に動いての間合いの攻防に徹し、また私にはそれほど攻めることなくスピードとタイミングで打っているような感じに見えたが、相手が彼の動きについて行けなかったのか、全て面の2本勝ちで準決勝まで勝ち進んだ。



1回戦を苦しみながら勝ち進んだ古川選手は2回戦で笠村選手と対戦する。古川選手に対して笠村選手はズイっと攻め入り、面に行く技を数度試みると、きわどいところで古川選手がそれを交わす。しかし3回目についにこの戦法で豪快な面を決めることができた。勢いに乗る笠村選手は2本目開始直後もすぐに動き、躊躇することなく間に入り込む。再び一本を取るかに思えた一瞬だったが、古川選手が予想外のスピードで返り討ちに面を取った。ここで古川選手が大きく変わったことに気づく。一本目の笠村選手の面で覚醒した古川選手はこのあとスーパーサイヤ人に変身し、マッハ2のスピードで移動可能となったのだ。1対1の勝負も同様の面で笠村選手を打ち取った彼は、この後快進撃を始める。

3回戦の相手、絶好調男の松本選手にも驚異的なスピードで攻め入って面、その後も半ば強引とも思える攻めを見せ、捩じ込むような突きを浴びせて二本勝ち。面をつけていないときは爽やか笑顔の紳士古川選手だが、面をつけた途端に勝負の鬼となる。その上このときは鬼というよりもスーパーサイヤ人になったベジータのように血も涙も無い感じで松本選手を一蹴した。

その古川選手は準決勝では山中選手と対戦。山中選手はここまで全て面の2本勝ちでまさに絶好調に見える。しかし古川選手はそんなことはまったく意に介せずといった感じで、ガンガン打ち間に入り込んで攻めたてる。山中選手は古川選手の厳しい攻めにたまらず後退すると、古川選手は光速で飛び込み面を決める。また山中選手が安易に面に伸びるところを待ってましたとばかりに胴にとり、この試合を簡単に終わらせてしまった。

弱いわけでも不調だったわけでもなく、むしろ絶好調だった山中選手だったが、彼は所詮人間レベルだったのだ。スーパーサイヤ人ベジータに化した古川選手の前に、なすすべもなく砕け散った。




b0241736_1242880.jpgさて、おまちかねの決勝は古川和男選手対石田利也選手の戦いとなる。

高レベルの厳しい間合いの攻防が展開する中、石田選手が攻めて出てくるところに古川選手は後退せず、マッハ2のスピードで最速の小手を小さく打つとこれが決まる。

よく見ると石田選手の動きが鈍ってきているのに比べ、回を重ねるごとに古川選手の動きにはキレと冴えが際立ってきていて、マッハのスピードも加速度を増してきているのがわかる。

攻めも古川選手がわずかに勝っていて、石田選手が後手に回り出す。2本目は古川選手が相面を制したのだが、これも古川選手が先をとっていて、石田選手はそれに合わせて面に行っているように見えた。パターンとしては対宮崎戦と同じ状況になったのだが、古川選手のキレのある動きが際立ち説得力充分であったのが、石田対宮崎戦での状況との違いだろうと考える。



b0241736_12382167.jpgということで古川選手が優勝したのだが、彼の勝因は彼がスーパーサイヤ人にレベルアップできたことであろう。よって彼をスーパーサイヤ人に変身させてしまった笠村選手がこの大会の大きな鍵を握っていたと考える次第である。

つまり笠村選手に面をいただけば覚醒する可能性があるということだ。

私も笠村選手に面をいただいてもう少しマシな剣道ができるのではないかと、淡い期待を抱いており、次に稽古をいただける日を密かに心待ちにしている次第である。






b0241736_12404886.jpg最後の写真は帰りに大須の矢場トンで食べた「味噌串カツ定食」。で〜りゃ〜うみゃぁでいっぺんいってみてちょ。
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by alaskakendo | 2015-04-27 12:44